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朝鮮学校無償化 早期に不平等是正を 神奈川大法科大学院教授 阿部浩己(2012.3.25;神奈川新聞「論点争点」)

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 すべての高校生の経済的負担を減らし、教育の機会均等を図る高校無償化法が施行されて、4月で2年を迎える。

 同法が画期的だったのは、各種学校である外国人学校を指定対象に加えたことだ。現在までに、37の外国人学校の生徒に就学支援金が支給されている。

 日本で生活する子どもたちに、国籍にかかわりなく学習権を保障する同法は、多様な人間が社会で共に生きるための大切な理念を体現している。

 ところが、平等精神に貫かれるべきこの法律が、朝鮮学校にだけ適用されないままにある。朝鮮学校とは、日本の植民地支配下で抑圧されていた民族の言葉や文化を取り戻し、伝える場として在日朝鮮人が第2次大戦後に設立したもので、高校は全国に10校ある。

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と外交関係がないことなどから別扱いにされた朝鮮学校について、文部科学省は2010年11月5日、法律適用の基準と手続きを明らかにした。教育内容には立ち入らず、高校の課程に類する課程であるかどうかを制度的、客観的に判断する旨が示された。

 これに従って各地の朝鮮学校はすべて申請を済ませたが、同月23日、朝鮮半島で起きた砲撃事件を理由に審査は突如停止された。昨年8月に再開されたものの、今日に至るもたなざらしである。

 外国人学校の取り扱いは外交上の配慮などにより判断すべきでないという政府統一見解にもかかわらず、外交的思惑が影を落としていることは紛れもない。北朝鮮との非正常な関係が、そのまま朝鮮学校の扱いに映し出されている。

 だが、この法律が支援の対象にしているのは、国でも学校でもなく、一人一人の生徒のはずだ。実際には韓国籍も多い朝鮮学校の生徒たちをひとくくりに北朝鮮に結び付けてしまうのは短慮にすぎるが、それ以上に、外交的配慮による不平等な取り扱いは、基本的人権の観点からおよそあってはならないことである。

 すべての子どもたちへの差別なき学習権の保障は、憲法のみならず人権条約によって日本に課せられた明白な法的義務である。

 朝鮮学校に対する差別的処遇はこれまでも国際的に重大な懸念を呼んでおり、事態を是正するよう求める勧告が人権諸条約機関から次々と寄せられてきた。

 10年3月には、人種差別撤廃委員会が懸念を表明し、日本政府にユネスコ教育差別禁止条約への加入を奨励するに及んでいる。

 問われているのは、北朝鮮の振る舞いではない。日本の中で生きる子どもたちを等しく処遇できない、私たち日本人自身の姿勢である。

 高校無償化法の不適用は、朝鮮学校の生徒の尊厳を傷つけるとともに、日本の国際的信頼を損ねている。

 それはまた、公正な世界を希求する多くの人々の思いを踏みにじり、日本社会の精神の基層にも深い傷を広げてきたのではないか。

 近代日本の歩みに思いを寄せるとき、朝鮮学校の処遇には重い歴史の責任が伴っていることも忘れてはなるまい。この不条理に、ただちに終止符を打つべきである。

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あべ・こうき 58年東京生まれ。専門は国際人権法。著書に「国際法の暴力を超えて」「国際人権の地平」など。

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